カテゴリ:フィクション( 1 )

日本に不況の嵐が吹き荒れた。企業はコスト削減に躍起になっている。そこで、政府が打ち出した政策が海外移住の奨励である。かつて、ブラジルやペルーなどに楽園を求めて移住させた政策が再び始まろうとしていた。政府は、年齢層の高い人たちに対して手当を払いたくない、生活保護も出したくない、だからと言って自国で飢え死にされたら大変である。そこで、生活コストが安いアジアに目を付けたのである。ベトナム、フィリピン、タイなどは比較的治安が良く低コストで生活できる。しかも、日本企業も進出しており、企業にとっても日本の非正規やアルバイトより低コストで使える人材はのどが出るくらい美味しい人材である。そこで、ハローワークが海外での職の仲介を始めた。海外での経験ができます。暮らしには困りません。仕事は簡単です。日本語さえ話せれば学歴、年齢は一切問いません。美辞麗句が並べられていた。そうやって海外への移住を奨励、斡旋した。もちろん、行ってしまえば終わりである。そこでの賃金は、到底日本へ帰って暮らせるほどではないし、年金も何もない。片道切符なのである。その数は年々増加の一途をたどる。日本は高齢化にはもはや対応できないほどに少子高齢化が進み、外国人による低賃金の労働力が好まれ、高齢の日本人はお荷物となった。そこで、移住政策により働けない日本人の移住政策が始まった。アジア諸国では、日本人の増加により日本人のコミュニティが出来上がりつつあった。しかし、かつてのブラジル移民ほど与えられた土地はなく、働く先は海外の邦人企業ばかりで、待遇は現地人並みである。安月給でただひたすら人足として働かされる。そこには人権も温情のかけらもない。現地社員は高給取りで高慢な態度でこき使う。嫌ならいつでもクビにできる。弱みに付け込み日本的就労を押し付けてくる。逃げ場がない。辞めて別の会社で働いても待遇は似たり寄ったりである。日本人が増えるにしたがって、競争も激しくなり、軋轢が生まれる。そうやって、現地で命を落とす日本人が増加していった。ニュースで取り上げられることもなく、日本で報道されることもなく、誰にも知られずに過酷な環境に晒される日本人の実態が知られるのは、日系何世と呼ばれる子孫が誕生する何十年も後のことである。その頃には、もう移住させる日本人もいなくなり、移民政策はとっくに終わっている。日本と言う国はそういう残酷な国なのである。
*これは、歴史に基づいたフィクションであるが、あながちあり得ない話でもない。さあ、あなたはどの国を選びますか。今ならまだ空きは一杯ありますよ。なくなったら、どこかの島へ行く羽目になるかもしれませんよ。ハローワークでそう囁かれる日が来るかもしれない。

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by katze210 | 2017-11-18 18:58 | フィクション

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